[レポート] 9/26 地域のアウトリーチ研修会 - はこうまプロジェクト
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2010.09.26

[レポート] 9/26 地域のアウトリーチ研修会

魚沼市小出郷文化会館の榎本広樹氏による、「地域のアウトリーチ研修会」(9/26 教育文化会館で開催) のレポート(内容のメモ)です。ひとまず雰囲気だけお伝え。ご参加になれなかった方も、もし興味ありましたらご参考にどうぞ。
講演情報: →9/26 地域のアウトリーチ研修会 

アウトリーチ とは?
もともと 「手を伸ばすこと、伸ばした距離」 あるいは 「(地域への)奉仕・援助・福祉活動」 「(公的機関や奉仕団体の)出張サービス」 という意味。文化施設では、例えば、公立ホールが招聘した演奏家を、本番のコンサートとは別に学校や福祉施設などに派遣し、ワークショップやミニ・コンサートなどを行う事業がアウトリーチ活動と呼ばれている。近年、アウトリーチ活動は文化施設と市民の新しい出会いや関係を生みだす活動であると考えられている。 (フライヤーより)

関連情報
動画: →ヒトミテ 榎本広樹氏インタビュー(前編)(後編) ※合わせて20分
会館開設時の話: →Amazon.co.jp: 小出郷文化会館物語
リンク: →小出郷文化会館→七色館長

参考書籍として挙げられていたもの
[アウトリーチ] トリトン・アーツ・ネットワーク 「アウトリーチハンドブック」
[アウトリーチ] 地域創造 「新・アウトリーチのすすめ」 ※ダウンロード可
[音楽家向け] A.ビーチング 「BEYOND TALENT」
[チケットセールス] D.ニューマン 「予約会員獲得のすすめ」
[チケットセールス] J.S.バーンスタイン 「芸術の売り方」 (→fringe)
[制作向け] 地域創造 「公立文化施設職員のための制作基礎知識」
[制作向け] 地域創造 「演劇制作マニュアル」 (→fringe)
※ 「芸術の売り方」は「予約会員~」の内容がもう古い、として出てきた本
※ 「BEYOND~」はマネジメント指南。宣伝写真の撮り方まで解説する
 

以下 レポート。話の順番などはバラバラ、青字は個人的な意見等です。

1. はじめに・メモ用紙
配布資料と一緒にメモ用紙が3枚→ 実際に困っていること(話し合いたいこと)や質問を書いて休憩時間に回収、ピックアップして回答、とのこと。 ちょうど 「(演劇のポストパフォーマンストークなどで)会場から何か質問はありませんか?と言われても結構困る」 という意見をみたばかりで、良いシステムかも と感じる。

2. 魚沼の地域的な状況
・山に囲まれた地形で、山間部は限界集落。人口は42,000(札幌市の2.2%)。
・クラシック音楽のマーケットは人口の1%と言われている。首都圏3000万でいうと30万人→そのうち 1/150 の人の来場で、2000席のホールを満員にできる。
・魚沼地域にそのまま当てはめると、1%が 450人、その 1/150 は 「3人」
・首都圏のマーケティングが明らかに通用しない。 かわりに、「顔が見える」
→1%の周囲に、自分をファンだと認識していない「なんとなく好き」くらいの層がいて、ここにアプローチすることで拡大する余地はある、と今ならば言える。

3. ホールオープン
・新潟県下に公共のホールは40。魚沼地域では最初のホールとなる。1100席。
・「ここを教育の場として使いたい」という意志があった。
・最初に考えたのは、とにかく知ってもらうための多彩なチャンネルを作ること
→講座・お茶会・(制作者/出演者/報道関係を招いて)プレトーク・ボランティアの募集(チケットは買わないが、ボランティア活動はしてみたいという需要) など

4. 「アウトリーチ」 の概念を知る (吉本光宏さんの講演・1998年)
・レーガン/サッチャー政権で芸術系予算が激減。学校で音楽の授業がない事態
→将来、ホールに来る観客が居なくなるという、劇場・演奏家の危機感が原点。
・自らがホールの外に出て、様々な手法で町の人々とコミュニケーションを結ぶ
ex.アウトリーチNPOが主催し、演奏家は時間と場所だけ知らされて現地へ
→自分達で観客席を並べるところから始める / 町のイベントに参加 など
・魚沼で自分達が手探りでやっていたことが、全てアウトリーチの世界にあった
→未開の大地が、目の前にばーっと広がったような感覚。

5. 魚沼でのアウトリーチの実践
・学校でのコンサート→ 子供にとってはすごい経験。TVでも報道され予算増へ。
・議場でのコンサート→ 実現のためにひどく煩雑な手続きを要したが、話し合いや説明を重ねることが地域の大きな理解につながってきた→ サイレント・パトロン(直接の観客にはならなくても、活動を理解して応援してくれる人)の獲得
・ホールのミッション(使命)に対する説明、これが無駄ではなかった
・アウトリーチというと 『お届け型』 (訪問公演など)の活動がイメージされがちだが、それは全体の1つに過ぎない。 →参考:アウトリーチの類型(地域創造)

6. セット券の販売について
・D.ニューマン「予約会員獲得のすすめ」 に、とにかくシーズン券・セット券を買ってくれる観客を大事に。価格を大幅に割引してもよい、という記述があり実践。
・格安のセット券を企画、1回目のDMで350の予約を得る→ 全く同じチラシを、その後2回にわたり郵送、最終的に870を販売。潜在的な需要の掘り起こし。
・大規模な告知(マスコミ)→ピンポイント(DM)→後押し(直接の営業) を徹底
・(メモ) 9/29 全く別件での平田オリザさんの発言→ シーズン券のよいところは、つまらない作品でも楽しんで観られるということ。あと「のだめカンタービレ」を読んだ人はわかりやすいと思うが、(観客が団体の活動を自分で評価して)今年は会員になる/やめるという世界は普通にある。

7. アウトリーチとチケットセールス
・訪問コンサート等の評価が高いという実感はあり、アンケート結果でも顕著
・サロンコンサート+学校訪問(2回)をセットに、別々の演奏家・会場で6公演
→ 最終的にはその出演者が一堂に会してホール公演、という企画を実施。
→ これは観客が入ると思った。が、そうはならなかった。予想 600→330
・チケットが売れる/売れない というのはすごく複合的な要因がある
・アウトリーチが入場者増に直接的に結びつくとはいえない
・チケットの売れ行きを阻害する要因を、ひとつひとつ丁寧に取り除くこと

8. 人口変動とアウトリーチの重要性
・それでもアウトリーチは重要かつ必要。なぜか →20年先の未来を見る
・将来への不安: 高齢化と人口が確実に減ること →社会保障・人口問題研究所
・魚沼は現在42,000人。これが2030年には32,000人と予測されている
・毎年、地域の人口が500減る。現在と同じくらいのお客さんに来てもらえるのは 今の小学生が、(将来)家族を連れてホールに来てくれる、という形だけ→ 希望
・政令指定都市は、深刻な状況になるのが少し遅いかもしれない。そうではない地方のホールは、もっと真剣に考えたほうがいいのではないかと思っている

9. 手探りでやってきた具体例
・専門家による定点観測、アーツ・マネジメントを学ぶ学生の現場実習
→マンネリ化の打破、新鮮な視点を持ち続けること
・同種企画の他ホールへの 「販売」 →経費節減 / オリジナル作品の創造
・音楽家と児童との間をつなぐスタッフの役割(司会)
→地域創造では、音楽家も話をする力が必要、と考えている。経験上、歌い手の人はコミュニケーションが割と上手、ピアニストに苦手な人が多い印象
・サロンでもよい演奏会環境を作るためのノウハウ蓄積
→初期はとにかくアーティストと外に出ることだけが大事→ 「これではいけない」
→反射板など: 建築士の館長が自作。非常に重いが音は格段に良くなった
→簡易照明: 自前で用意するようにした。観客の集中力にすごく影響する
→運搬は大変になったが、公演の質は確実に向上していると言える
成功の条件 (箕口一美によるまとめ)
→小さい人数、小さい会場、短い時間、演奏家の力、プログラム
 

札幌オペラ祭版 「ご近所のソコヂカラ」
会場からの意見について皆で話し合います。(参: ←参加者。不同)

参:小学校で人数の多いコンサート。子供の集中力が心配
参:合唱コンクール前に、本当のオペラの声を聴きたいという要望がありミニコンサートを開催。結構興味を持って聴いてもらえた実感がある
→時期的に受け手の側に強い「ニーズ」があったということ。小学校のコンサートでも事前に何らかのアプローチがあって、あらかじめ相手側に興味・ニーズを持ってもらうのがよいのでは(楽器の音の出る仕組みを勉強してもらうなど)

参:学校側の鑑賞経験を平等に与えたい気持ちから、対象が大人数になりがち
→生徒が多いと目が届かなくて大変ではないですか?音楽も同じです、というと理解してもらえる。音楽室での開催にしてくれる。

参:アウトリーチ活動を演奏家だけでやることは可能か
参:日程の調整/会場/プログラム/チラシ/相手先との調整など一気に増える。経験的には無理では。年間1・2回とか受け入れ先が知り合いなら可能かも。
参:マネジメント業務を第3者に委託できるかどうか、コストの問題
→発注できないというケースでも、その負担量を減らす努力はできる。アメリカの音楽院では、演奏家が自分で収入を得て行く方法やキャリアマネジメントなども授業の中で学ぶ→「BEYOND TALENT」 に詳しい

参:演奏家や会場はどのように選定しているか
→基本的に自分が選ぶ。合議制は多分向かない。会場はいたずらに新奇な場所を求めない。現場に行き、どういう問題が発生するか前もって考えるのは大事

参:学校公演で 「もうちょっと無駄が欲しい」 と言われたが →音楽家が子供に伝えたいことが山盛り、というケースは多い。そぎ落とすのが仕事の場合も

参:地域とのかかわりで重要なこと → キーマン、オピニオンリーダーと出会う

参:一度きてくれた人にずっと関心を持ってもらうには
参:いいものをやり続ける、という事に尽きるのでは。目新しいことをするのでも、行き過ぎてはダメ。観客の1歩半先を心がける
→ブランド・信頼を作っていく 特定の冠公演やシリーズからでも良いのかも

参:マスコミとの連携について →記者の人と実際に話す機会を持つこと。どういう視点で記事をかきたいか、というのもきっとある。実際アイデアをもらうことも多い

参:まだ知られていないグループ。どう売っていけばよいか
→地域のホール担当者との話でよく聞くのは、「TVに出演してる人だとチケットはよく売れるのだけど…」ということ。なぜか。→ 観客側に「この人の公演なら自分は満足するに違いない」というある種の信頼がある。知られていない、あるいは初演のようなケースでは、“誰か” が信頼を得る必要がある。
 

アウトリーチの意義 まだ知らない人に届ける

リンク: →fringe: 地域創造 制作基礎知識シリーズへのリンク集 (→Vol.18)

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