『生がふたりに分かつまで』 （仮）
現在、パートナーを事故で失った女性がいる。ささやかな葬儀を終え、遺体はいま焼かれている。一方で、生まれてくる命が彼女の身に眠っている。ひとりのようでふたりの人間。
空へ紫色の煙が黙々と立ち上っている。
その向こう側に過去、亡くなったパートナーのとある風景が見えてくる。その人は隣にいる人が好きである。だけど意中の隣人はきっと自分ではない別の隣人に恋している。そんな取るに足らない、ふたりになれないひとりの人間。
そして未来、のちに生まれてくるだろう子供の未来の風景。工場や厨房のような場所で、日常の業務として運ばれ運ぶ人間の体。死んだ人間を再生させる、今はまだないお仕事。ひとりを分かち、つなげる人間。
　
〈生〉 と 〈性〉 と 〈正〉 を巡って、3つの時間は展開されながら、それらの関係は直線的なようで、しかし円環のような。あるいはひとつの同じ場のような、不思議な感覚を与える。
再び、現在、彼女の元に市役所の人間が来て告げる。 「このご遺体はあなたのパートナーではないかもしれない」 と。
（引用元）